油の微生物分解処理 技術の一般化 に関する研 究(その4)
斉藤雅樹
*
・坂本晃
*
・小谷公人
*
・濱名直美
*
・関正明
**
*
製品開発支援担当・ **
実装アドバイザー
Research and Development for Utilization/Generalization of
Biodegradation Disposal of Recovered Oil (4
thReport)
Masaki SAITO
*・
Akira SAKAMOTO
*・
Kimito KOTANI
*・
Naomi HAMANA
*・
Masaaki SEKI
***
Product Development Gr.
・
**Implementaion Advisor
要
旨
油流出事故回収物の処理時の環境負荷低減を目的とする微生物分解技術について,平成13年度より大分県内のバ
ーク( 樹皮) 堆肥を用いた研究を行い,特許登録に至っている.その社会実装として19年度に北海道,山口県,20年
度に岩手県,栃木県,21年度に富山県,山口県( 2回目) ,22年度には岐阜県にて同様の実験を行い,油分推移と微
生物相変化について検討を行った.また,シンポジウム開催や拠点づくりなど各種の実装活動を行った.
1.
はじめに
平成9年のナホトカ号事故を契機に,当センターでは杉
樹皮製油吸着材をはじめとする油濁対策関連技術の研究
開発を行ってきた.平成19年度からは,回収油の現処理
法である「焼却」に対し,環境負荷低減型の処理と位置
付けられる微生物分解処理技術の社会実装を目標として
きた.これまで「回収油を閉鎖サイトにおいて微生物分
解処理した安全な残留物を環境に戻す」シナリオ実現を
目指し,バーク堆肥製造工場での発酵工程をそのまま処
理に適用するモデルの実証研究を行ってきた.
油濁事故回収物における油分は事故実測値で14∼21%程
度
1)
,ナホトカ号事故では数%
2)
と意外に低いため,処理拠
点を全国に配置することが社会実装には不可欠であると
考え,19年度には北海道,山口県にて,20年度には岩手
県,栃木県にて,21年度には富山県,山口県( 2回目) にて
バーク堆肥による油分解実験をそれぞれ行い
3) 4)
,本技術
の社会実装に向けたバイオ処理の拠点づくりを行ってき
た.
本研究では,岐阜県にて油分解のデモ試験を実施し,
あわせて,山口県で実装活動の一つとして関係者や市民
に向けての普及啓発シンポジウム・視察会を開催し,大
分県所有の特許の実施申請など事業化着手段階に至った.
2.
デモ試験
NPO日本バーク堆肥協会および関連団体を通じて新たに
拠点候補企業を募集したところ,岐阜県のバーク堆肥製
造企業より実験の申し出があった.全国的な実装活動す
なわち油のバイオ処理拠点を分散的に配置することを目
指し,岐阜県にて堆肥製造工場の発酵工程ヤードにて油
分解のデモ試験を実施し,バイオ処理の拠点づくりを行
った.計画どおり拠点候補1箇所でのデモ試験となった.
3.
社会実装活動
本 研 究 は 「 油 流 出 事 故 回 収 物 の 微 生 物 分 解 処 理 の 普
及」実装活動の一環と位置付けられている.堆肥製造工
場での油分解デモ試験で良好な成果が得られた拠点にお
いてはこれまでシンポジウムで地元の関係者や市民に向
けて普及啓発活動を行っている.今年度は,これまでに
基礎実験および実証実験を実施した山口県地域において,
技術紹介と設備公開を兼ね,関係者や市民に向けての普
及啓発シンポジウム・視察会を開催した.
シンポジウム「科学技術の実装としての流出油バイオ
処理」と題し,平成23 年 1 月19日に山口県下関市にて
開催し,翌 20日は油処理が可能な設備実現に向けた改修
を実施した拠点企業ヤードの視察会を開催した( Fi g. 1∼
Fi g. 2) .
シンポジウムではまず成城大学・小田切宏之氏による
基調講演「科学技術の経営と政策における新しい流れ」
にて,科学技術の実装が社会の中でどう位置付けられ評
価されているかの動向などが紹介され,幅広い視点から
提言を頂いた.続いて,「油流出事故への対応」と題し
て( 独) 海上災害防止センターの萩原貴浩氏に講演を頂き,
油流出事故とはどんなものか,そして具体的対策の概略
について実際の事故をもとに専門的知識をかみ砕き,一
般来場者にもわかりやすく紹介された.また,ここ半年
のホットな話題であるメキシコ湾の大規模油流出事故へ
の対応の最新状況についてプレゼンテーションが行われ
た.
その後,本実装活動の紹介として,「流出油のバイオ
処理∼全国で実施中の油分解実験」と題し,当センター
より活動趣旨と具体的構想につき説明を行った.山口県
下関地区で実施されたデモ試験の結果をもとにした事業
化への取り組みを山陽チップ工業㈱の伊藤一則氏より紹
介され,本実装活動への協力が呼びかけられた.この後,
当センターの実装アドバイザーで産業廃棄物対応の専門
家である関正明氏と,( 独) 科学技術振興機構のプログラ
ムオフィサーである冨浦梓氏を加えたパネルディスカッ
ションが行われ,本技術の実装が社会に与える影響や貢
献などについて議論が行われ,様々な提言が行われた.
当日は油流出事故など海上防災従事者をはじめ,行政
機関,教育機関,一般の環境業務・学習に一般の環境業
務・学習に取り組む市民まで幅広い参加者があり,特に
民間企業からの参加者が目立った( Fi g. 3∼Fi g. 4) .
Fi g. 1 会場の様子( H23. 1. 19 下関市,参加 93 名)
Fi g. 2 視察会の様子( H23. 1. 20 下関市,参加 37 名)
Fi g. 3 機関別内訳
Fi g. 4 業務分野別内訳
4.
まとめ
本研究における実施内容は以下のとおりである.
・山口県において,油分解実用デモ試験をもととし
た事業化の取り組みが行われており,その状況など
を紹介するシンポジウム「科学技術の実装としての
流出油バイオ処理」を開催した.
・岐阜県においてバーク堆肥を用いた油分解デモ試
験を実施した.
微生物分解処理技術は,製造,使用,処分時における
熱処理が原則として不要な環境負荷の低い油回収・処理
システムとして期待されており,引き続き本技術の一般
化と社会への実装活動が求められることになると考えら
れる.
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